コラム

企業立病院 株式会社が経営する医療機関について その1

今回は企業立の医療機関についてご紹介します。
我が国では医療の非営利性が原則とされ、
企業が医療機関を経営をすることは原則として認められていません
医療法人の理事長は原則として医師のみとされておりますし、
他にも、営利法人による出資の制限、役員兼務の要件、配当禁止など
営利企業による医療機関の経営には様々な規制があります。
ただし、そのような本邦のもとでも
企業が直接経営する病院、企業立病院・企業率診療所があります。
これは多くは昭和23年10月以前に既に病院・診療所として開設されていたものです。
現在でも残っている企業立病院は以下です。
日本郵政 – 東京逓信病院
NTT東日本 – NTT東日本札幌病院、NTT東日本関東病院、NTT東日本伊豆病院
関西電力 – 関西電力病院
中国電力 – 中電病院
北海道旅客鉄道 – JR札幌病院
東日本旅客鉄道 – JR東京総合病院、JR仙台病院
東海旅客鉄道 – 名古屋セントラル病院
西日本旅客鉄道 – 大阪鉄道病院
東急 – 東急病院
日立製作所 – 日立総合病院、ひたちなか総合病院
不二越 – 不二越病院
三菱重工業 – 三菱神戸病院
三井E&S – 玉野三井病院
トヨタ自動車 – トヨタ記念病院
三菱自動車工業 – 三菱京都病院
マツダ – マツダ病院
いすゞ自動車 – いすゞ病院
日東紡績 – 日東病院
麻生 – 飯塚病院
丸玉木材 – 津別病院
キッコーマン – キッコーマン総合病院
株式会社互恵会 – 大阪回生病院
このような元国営企業や、大企業、
また企業城下町を形成しているところにも見られます。
この並びを見ると、どこか昭和の気風を感じます。
私(片山敦朗)の祖父は
鉄の街・岩手県釜石で医師をしていたのですが、
新日本製鐵釜石製鉄所付属病院(現・せいてつ記念病院)に勤めていた時期があり、
まさに、昭和の基幹産業である製鐵の企業立病院で勤務していたようです。
とはいっても、祖父は私が小学生の頃に亡くなったので、
祖父から企業立病院については聞くことはできませんでした。
祖父は新日鐵病院を退職したのちに個人診療所を開設したのですが
私が釜石の祖父母の家に行くと、廊下を隔てて直接診療所に繋がっており、
手術台や医療機器が立ち並んでいたり、薬品の匂いがしたのを覚えています。
さて、そのように昭和23年を境に原則として新設ができなくなった企業立病院・診療所についても
門戸を広げるべき、という議論もあります。
経営をプロに任せることで、医師は医業に専念できること
競争原理が働いて医療サービスが良質化すること
出資など投資家からの資金調達が容易になり、経営が安定すること
などのメリットも大きいですが、
他方で、公共性が求められる医療で、利益重視の姿勢がマイナスに働くことも想定されます。
企業による経営が広く認められているアメリカでは
救急部門が縮小されたり、スタッフが削減されるなどの弊害も見られているようです。
どちらに舵を切るべきか
次稿に続きたいと思います。
〔文責 片山敦朗〕