リスケジュールによる医療機関の事業再生
リスケジュールによる医療機関の事業再生
医療機関の経営者は、債務の弁済に真面目に取り組む方が多く、資金繰りが厳しい状況に陥っていながらも、約定どおりの弁済を続けてしまい、結果として事業の再生が困難となるケースが少なくありません。
もちろん、約定どおりに弁済できることが理想であることは間違いありません。しかし、金融機関としても、医療機関の事業が廃止となることを望んでいるわけではありません。資金繰りが厳しくなった段階で、虚心坦懐に、誠実に申し入れをすることで、金融機関が柔軟に応じてくれるケースは決して少なくないのです。むしろ、問題を抱えたまま弁済を続け、手遅れとなってから相談に来られるケースこそが、再生を困難にしてしまいます。
リスケジュールを検討されている医療機関は、当座の資金繰りには窮していても、地域の患者からも職員からも支持されており、収支の実態は健全であるケースが多いものです。地域医療を支える医療機関が、資金繰りの問題だけで廃院に至ることは、地域にとっても大きな損失です。
リスケジュールは、特別な手続でも、恥ずかしい選択でもありません。経営者として早期に決断し、構えずに検討していただきたい手法です。
1 リスケジュールとは――他の手法との比較
事業再生の手法は、大きく①リスケジュール、②中小企業再生支援協議会・事業再生ADR・特定調停などの私的整理、③民事再生などの法的整理に分類されます。これらのうち、リスケジュールは金融機関が最も応じやすい手法です。
法的整理(民事再生等)や事業再生ADR・特定調停、さらには借入金の一部免除(債権カット)を伴う交渉は、金融機関にとって損失計上や社内審査上の大きな負担を意味します。これに対してリスケジュールは、あくまで返済スケジュールの変更にとどまるため、金融機関の会計処理・審査上の障壁が相対的に低く、交渉が成立しやすい性質があります。
特に、以下のような条件を提示できる場合には、金融機関が応諾する可能性がさらに高まります。
金融機関の立場からすれば、利息収入が維持され、かつ経営改善の見通しが合理的に説明されている場合、リスケジュールに応じることは実務上の選択肢として十分に受け入れやすいものです。
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【医療機関の強み】 医療機関においては、診療報酬収入という安定したキャッシュフローの存在が強みとなります。 一時的な資金繰りの悪化であっても、将来の収益見込みを適切に示すことで、 金融機関の理解を得やすい環境にあるといえます。 |
なお、リスケジュールを選択した場合でも、それで経営再建が完結しない場合には、より踏み込んだ手続への移行が必要になることもあります。まずはリスケジュールを出発点として、段階的に再建を図るというアプローチが現実的です。
2 金融機関への要請順序
複数の金融機関から借入がある医療法人・医療機関が返済条件の変更(リスケジュール)を要請する場合、まず要請する金融機関の順序を慎重に決定する必要があります。借入額の大小、取引期間の長短、地方銀行かメガバンクか、政府系金融機関か否かといった点を総合的に勘案して判断します。
いわゆるメインバンクとして密接な関係にある金融機関があれば、最初にその金融機関に要請するのが原則です。メインバンクが存在しない場合には、地域に根ざした地方銀行や信用金庫から交渉を開始することをお勧めします。
3 金融機関への提出書類
要請の際には、必ず書面を用意して持参することが重要です。書面には、少なくとも以下の事項を記載する必要があります。
また、過去3期分の貸借対照表・損益計算書など、現在の経営状況を示す資料も必ず添付してください。医療機関の場合、診療報酬明細書(レセプト)データや患者数推移、病床稼働率なども経営実態を示す資料として有効です。
4 弁護士への依頼が不可欠な理由
金融機関へのリスケジュール要請は、経営者である医師本人や事務長が行うことも不可能ではありません。しかし、以下の理由から、事業再生の経験が豊富な弁護士への依頼を強くお勧めします。
① 本業への支障を防ぐ
金融機関との交渉は、精神的にも肉体的にも相当の負担を伴います。医師が自ら交渉に当たると、本来注力すべき医療提供や院内の経営改善策の実施に支障をきたしかねません。医療の質の維持と経営再建を両立させるためにも、交渉窓口は弁護士に一任することが合理的です。
② 説得力ある書面の作成
金融機関を納得させるには、論理的かつ分かりやすい書面の作成が不可欠です。医療機関の財務構造や診療報酬制度の特性を理解したうえで書面を作成できる弁護士に依頼することで、金融機関の担当者・審査部門に対してより強い説得力を持たせることができます。
③ 交渉力の差
金融機関の担当者は融資先との交渉に日常的に対応しており、交渉慣れしています。こうした相手との折衝には、同様に交渉経験を積んだ専門家が当たるべきです。
また、弁護士が交渉の窓口となることには、もう一つの重要な効果があります。金融機関は、弁護士が関与している案件については、交渉が決裂した場合に債権カットを伴う民事再生等の法的再生手続へ移行する可能性を現実的なものとして意識します。金融機関にとって法的整理は、損失計上や既存融資の回収リスクを伴う事態であり、できれば避けたい選択肢です。弁護士の関与により、そのフェーズへの移行が視野に入っていることが暗に示されることで、金融機関としてはリスケジュールの段階で合意することへの動機付けが強まります。すなわち、弁護士が交渉することは、単なる代理人としての役割にとどまらず、金融機関をリスケジュールの合意へと誘導する戦略的な意味も持っているのです。
5 リスケジュールで解決できない場合
要請がリスケジュールの範囲内であれば、金融機関の数や種類にもよりますが、適切に交渉を進めることで合意が得られる可能性は十分あります。
一方、借入先が多数に及ぶ場合や、リスケジュールにとどまらず借入金の一部免除(債権放棄)といったより踏み込んだ要請が必要な場合には、通常の交渉の枠を超えた手続(私的整理・法的整理等)への移行を検討する必要があります。
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当事務所は、医療機関の事業再生・事業承継に豊富な経験を有しております。金融機関との交渉から書面作成まで、一貫してサポートいたします。まずはお気軽にご相談ください。
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