オンライン診療の法制化
令和8年4月1日施行の医療法改正により、近年広がりを見せていたオンライン診療が医療法に規定されることとなりました。
従前は主に厚労省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針」等に基づいて実施されていたオンライン診療ですが、今回の法制化に伴い、オンライン診療に対する規制は今後より本格化していくと思われます。
法改正の概要としては、主に以下の点が挙げられます。
1 オンライン実施に関する届出の義務化
医療法上、「オンライン診療」が「医師又は歯科医師の使用に係る電子計算機(入出力装置を含む。以下この項において同じ。)と患者の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織を使用し、映像及び音声の送受信により、医師又は歯科医師及び遠隔の地にある患者が相手の状態を相互に認識しながら通話することが可能な方法による診療」として定義付けられ(医療法第2条の2第1項)、オンライン診療を実施する医療機関はその旨を都道府県知事へ届出ることとなります。
この義務は、新たにオンライン診療を開始する医療機関のみならず、改正医療法の施行前からオンライン診療を実施している医療機関に対しても適用されることとなりますが、経過措置により、改正法施行時点ですでにオンライン診療を実施している医療機関は、令和9年3月末日までにオンライン診療に関する届出を行えば足りるとされています。
また、今回の医療法改正により、新たに「オンライン診療受診施設」が定義されました。オンライン診療受診施設とは、「当該施設の設置者が、業として、オンライン診療を行う医師又は歯科医師の勤務する病院、診療所、介護老人保健施設又は介護医療院に対して、その行うオンライン診療を患者が受ける場所として提供する施設」とされます(医療法第2条の2第2項)。当該受診施設にてオンライン診療を実施する医療機関とのウェブ会議等を繋ぎ、当該場所にて患者が受診する機関であり、過疎地医療等を想定した制度です。
このオンライン診療受診施設の設置者は、必ずしも医師や医療機関であることを要しませんが、設置後10日以内に当該施設の所在地の都道府県知事に届出を行うものとされており(医療法第8条2項)、設置者の住所・氏名、名称・設置場所、敷地の面積、建物の構造概要・平面図、設置年月日等の各事項を届出るものとされています。
2 オンライン診療の適切な実施に関する基準の策定
厚労大臣は、オンライン診療の適切な実施に関する基準(以下「基準」といいます。)を定め、医療機関はこの基準を遵守してオンライン診療を実施することとなります。
策定された基準の主な内容は以下のとおりです。
なお、これらの事項の詳細については、「基準等遵守の確認をするためのチェックリスト」として厚労省が下記リンクを公開していますので、そちらをご活用ください。
https://www.mhlw.go.jp/content/001681020.pdf
①患者の同意
オンライン診療の実施に際しては、医師から必要な説明を行い、患者の希望と同意の下にこれを行う必要があります。
②オンライン診療の対象
初診からのオンライン診療は、原則として「かかりつけの医師」が行うものとされています。かかりつけ医以外の医師がオンライン診療を実施する場合は、適切に対面診療につなげられる体制の確保が必要とされ、また緊急性の高い症状についてはすぐに対面受診を促すこととなります。
③診療計画
医師はオンライン診療を行う前に、患者の心身の状態を対面診療により診断し、その評価に基づき診療計画を定め、2年間保存するものとされます。
初診からオンライン診療を行う場合、診察後にその後の方針を患者に説明する。オンライン診療の継続見込みがある場合、速やかに診療計画を定め、保存するものとされます。
④本人確認
原則、医師・患者双方が身分確認書類で本人確認を行う必要があります。
⑤薬剤処方
医師は患者に対し、現在服薬している医薬品を確認し、初診の場合は、麻薬・向精神薬の処方、基礎疾患等を把握できない患者に対する特に安全管理が必要な薬品の処方、当該患者に対する8日分以上の処方を行わない等の規制が課されます。
⑥診察方法
診察は、リアルタイムの映像・音声を用いて行うものとされ、文字、写真、録画動画のみで診療を完結させてはならないとされます。また、医師は、診療を行う患者の状態について十分な情報が得られない場合には、オンライン診療を直ちに中止し、対面診療に切り替えるものとされます。
⑦医師側の提供体制
医師は、医療機関に所属し、所属や問合せ先を明らかにするものとされます。
⑧情報セキュリティ
医療機関は、十分な情報セキュリティ対策を講じるものとされ、診療については第三者に患者の心身の情報が伝わらないよう、物理的に隔離された空間で行うものとされます。
このように、オンライン診療実施については様々なルール付けがなされており、これらの不遵守の場合には罰則を含む多大な法的リスクが見込まれます。オンライン診療をすでに実施している医療機関の皆様、今後オンライン診療を実施予定の医療機関の皆様におかれましては、ぜひ一度弊所まで制度設計や運用についてご相談ください。
